男鹿人のおもてなしの心が生んだ
「目で、耳で、舌で楽しむ男鹿の名物料理」
その昔、男鹿の荒磯で木舟を操る漁師たちは、獲った魚や海藻、ネギなどを水を張った桶に入れ、そこに船内の火鉢の炭火で真っ赤になるまで熱した小石を次々に放り込んで一気に煮込み、味噌を加えて調味したものを昼食として食べていたそうです。
粗野で奔放な調理法ながら、新鮮な魚介類のダシがきいた格別な味わいの漁師料理を、観光客の方にも味わっていただこうと、昭和38年頃に男鹿温泉の男鹿ホテルが団体客向けのお座敷料理として考案、提供をはじめた磯焼(いそやき)を発祥として、現在の石焼料理に名を変え、男鹿の名物料理として定着しています。
音と湯気をあげて瞬時に沸き上がる豪快な演出を目の前で楽しんでいただき、男鹿に来たお客様にもっと歓んでもらいたいという男鹿人のおもてなしの心が生んだ「目で、耳で、舌で楽しむ男鹿の名物料理」です。
豪快な演出に隠された繊細な調理技法
具材の鉄則
新鮮な男鹿の「生の魚介」
高温の石を液体に入れて加熱する技法はストーンボイリングと呼ばれ、太古からある調理法のひとつです。
真っ赤になるまで焼けた石でごく短時間に汁を沸かし、魚介を一気に加熱することでその身に旨味を閉じ込めます。アラ汁やザッパ汁とはちがい旨味が汁に出きっていないため、出汁の効いた汁とともに、具材として魚介の味を堪能できます。
石焼料理の調理技法としての大きな特徴は、この「生の魚介を急速に加熱する」点にあります。
すでに火の通った(下茹でした)魚介を使っては本来の石焼料理の味わいは生まれませんし、単にできあがった味噌汁を石で再加熱してる訳でもありません。焼けた石を入れ、音と湯気をあげて沸き上がる派手な部分に目がいきますが、じつはその演出の裏には、男鹿の魚介をより美味しく召し上がっていただくための繊細な調理技法が隠れているのです。
調理のかなめ
男鹿特有の「金石」
石焼料理の調理法に欠かせない「金石(かないし)」は、正式名称を溶結凝灰岩という高温の火山灰や火山礫が堆積して固まったものです。男鹿北部にある約7千万年前の地層より海中に崩れ落ち、長い年月をかけて丸く磨かれた金石は量が乏しく、いまではとても貴重な資源となっています。
金石の名は「内部にすき間がなく硬くて割れにくく、高温に耐えて金属のように真っ赤に焼ける」ことに由来します。通常の石よりも内部まで熱を蓄えることができるため、水に入れてもすぐ冷めず、この石があるからこそ石焼料理は実現できています。とはいえ、いくら金石でも急激な温度の変化には耐えきれず、2~3回くらい使うと割れてしまいます。
石焼料理は、男鹿温泉のお宿や
入道崎の飲食店などで食べることができます
石焼料理は、お店やお宿ごとに味わいがちょっとずつ違います。
大半のお店が伝統的なみそ味ですが、塩やしょっつるのほか、キムチチゲなどの変わり種もあります。また、具材も魚のほか、カニやエビ、貝などを入れるお店もあります。ぜひ色々なお店ごとのこだわりのつまった男鹿の石焼料理をお試しください。