金ヶ崎温泉(跡)
大正~昭和初期の頃、北海道のニシン漁で財をなした戸賀集落の網元がここ金ヶ崎の源泉のある入り江に露天風呂と長屋風の宿を建て、湯治客が利用していたそうです。
この温泉は集落から遠く離れた場所にあり、現在のような西海岸の道路がまだなかった当時は、門前などから漁師に船で送迎してもらわないと辿りつけないまさしく海の秘湯だったと思われます。
秋田の版画家 勝平得之が当時の金ヶ崎温泉の様子を版画に残していて、海側には石組みの目隠しあるいは波除けがあり、ランプも灯されていたようです(浴槽がひとつなので混浴だったようです)。
また、昭和前半につくられた男鹿小唄という民謡の歌詞に「渡り鳥さえ ぬれ羽をやすめ のぞく温泉(いでゆ)の のぞく温泉(いでゆ)の 金ヶ崎」とあることから、当時は男鹿を代表する海の湯治場であったものと考えられます。
1950(昭和25)年頃に管理人が引き払った後も放置された宿舎を利用する湯治客がいたそうですが次第に宿舎や湯船が崩壊して、現在では浴槽の一部を残すのみとなっています。
なお、露天風呂の近くには不自然な岩場の一角があり、おそらくここを湯治客を乗降させる船着き場として利用していたのかもしれません。
崩壊したかつての露天風呂の一端に湯が今も湧き出ていて、直径50cmほどの湯だまりになっています。
取材したときは湯だまりからあふれるほどの湯量で、湯温は45℃前後。ひざが浸かるくらいの深さがあり、全身浴するには湯だまりが小さすぎますが、足湯として十分楽しめるサイズ感。
※季節や天候等によって湯量や湯温が大きく変わるようですのでご了承ください。
西海岸に道路が敷かれた現在は、陸側からもなんとかアクセス可能(藪漕ぎ・崖下りなど非常に危険なルートとなっておりますので自己責任でお願いいたします)。
片道約20~30分。道路沿いにある駐車スペースからの奥の獣道を進み、ロープを使い崖を降り、金ヶ崎北端から入り江の方に歩いていったところに露天風呂(跡)はあります。
この露天風呂(跡)から少し南側にある別の源泉井戸から汲み上げられた、いわば「新金ヶ崎温泉」が約2km離れたHOTELきららかまで引湯され、浴場の温泉として利用されています。
【参考】秋建時報 随想「海の湯治場 金ヶ崎温泉」(永井登志樹氏)
最終更新日: 2022-09-03
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ホテルきららかから車で5分。車を降りて徒歩20分